“映画づくり、人づくり、まちづくり”
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“三河映画” THE FILMS COMMUNE

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2017/10/27
広角レンズから飛び出す役者

役者・加藤睦望は自由だ
彼女が演技中
何をしでかすかは予測不能

何せ「よーい、スタート!」の声とともに
彼女はどこかへ飛んでいってしまう
広角レンズ(※)を使用した引いた絵でも
収まらないほど自由奔放に動き回る

カメラの後ろ側に回り込もうが
物陰に隠れて見えなくなろうが
監督の声が届かないほど遠くへ行こうが
おかまいなしに演じ続ける
こんな自由な役者は
今まで見たことがない

今回彼女が演じたのは
障害を抱えた少女だったが
リアルに演じられる人がいるのだろうか
そんな心配の中
オーディションで出会ったのが
彼女だった

面談をしていくと
彼女は障害者支援施設で働いており
その障害を抱えた人たちと
たくさん触れ合ってきていることが分かる
彼女以上の適任はいなかった

こうしたキャラクターは
ともするとステレオタイプに
陥ってしまいがちだが
彼女はちゃんとひとりの人として演じた

障害について私は
強力な個性として演じて欲しいと話したが
彼女はそれを非常によく理解してくれた

教員時代に特別支援学級を
6年間担任した私が見ても
彼女のおかげで
自然で愛らしいキャラクターが
生まれたと思っている

監督 岩松あきら

※広角レンズ:肉眼より広い範囲(角度)を撮影できるレンズ。

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2017/10/20
ごっそり1時間カット

現在「Ben-Joe」は
編集によって
カットに次ぐカットを
繰り返している

撮影したものを
すべてつないだバージョンが
3時間30分

最新のバージョンは
それより約1時間短くなり
2時間35分にまで
刈り込まれている

伏線に布石
そしてサイドストーリーなど
どんどん姿を消していく

今回もオリジナル・ストーリーだが
脚本を練りに練った日々
準備・撮影の苦労を思うと
制作者の立場としては
残念でならないが
多くの人に観ていただくためには
やむを得ない

作品の内容が
シンプルで明確になり
観やすいものになっているのは
間違いない

完成形に落ち着くまでには
まだまだカットを
続けていかなければならないが
どんな作品になるかは
かなりはっきりと見えてきた

監督 岩松あきら

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2017/10/14
アフレコ@東京

「Ben-Joe」に出演している
山本佳代さんが
近々活動の拠点を
アメリカに移すため
その前にアフレコをしようということで
東京某所にて2日間の缶詰状態で
アフレコ(※)作業を敢行

編集された映像に
声を合わせるため
前作「幸福な結末」では
役者にヘッドホンを
つけてもらい
撮影時の声を聞きながら
アフレコを行っていたが
今回はその方法を廃止

事前に編集された映像を
確認してもらい
撮影現場のテンションや空気を
感じてもらった後
映像を見ずに演じてもらうことを選択

こうすることで
役者がより撮影現場に近い形で
芝居ができるのではないかと
考えたからだ

録音された音声は
スタッフによって
すぐさま映像に当てはめていく
もしうまく合わなければ
随時録り直していく
この作業を2日間
繰り返すというわけである

撮影から随分時間が経っているため
役者にとっては撮影現場と
同じテンションで演じるのは
難しかったかと思われるが
無事終了

来月の三河でのアフレコも
この調子でうまくいくことを願う

監督 岩松あきら

※アフレコ:
アフター・レコーディングの略。撮影後映像に合わせて役者の声を録音すること。

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2017/10/06
監督! チャレンジできるネタを下さい

三河映画の
特殊メイク・特殊効果の担当
岩井菜摘のバックには
心身ともに大きな存在がいる
山本キョージ“先生”だ

彼は現役美容師でありながら
専門学校や大学で教鞭を執ったり
数々のワークショップを開催
日本のみならず海外でも活躍している

自宅のガレージを工房へと改造
三河映画の特殊メイクや特殊効果は
すべてその工房から生み出されてきた

思えば私は
特殊メイクや特殊効果に対しても
無理難題を言い続けてきた
それに対して
何度も試行錯誤の末
ボツにしたものも多々ある

しかし今まで彼に
不平不満を言われた記憶などひとつもない
それどころか
“勉強になったから”
“次に活かせるから”
と逆に感謝の言葉を返される

しまいには
“もっとチャレンジできるネタを下さい”
と言われる始末
何たるチャレンジャー
そして誰にもまして熱い男

チャレンジ好きの私には
彼は最高の“先生”なのである

監督 岩松あきら

※写真はヒロインの身体を型どりをしている様子

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2017/09/29
枠を飛び越える

リハーサルと並行して
映画“Ben-Joe”のセット作りは
山の中に小学校跡地で
着々と進められていた

その中で
役者の高橋慎祐は
大工の腕前を存分に発揮していた

彼は映画“Ben-Joe”で
非常に重要な役を演じるのだが
リハーサルの合間を縫って
セット建設にも参加していた

彼は大工経験をもつ役者で
私が観劇した舞台では
美術を担当していた

作品づくりに対して
献身的な彼は
三河映画では
役者の枠を飛び越えた

彼は時間に正確で
何事も準備に余念がない
納得できるまで考え
その上で完璧な仕事をする

これはセット作りだけでなく
役作りにおいても同様の姿勢である
努力に裏打ちされた演技には
安定感がある
非常に信頼のおける役者である

たとえわずかなカットだけの撮影でも
作品に貢献できるのならと
遠方から往復も厭わない

普段から温厚な性格で
リハーサルで人の演技に涙ぐむ
そんな心優しき彼が
今回演じたのは真逆なキャラクター
さすがは熟練役者
変幻自在だ

監督 岩松あきら

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2017/09/22
“Listen”

紀里谷和明監督が
ハリウッドで「ラスト・ナイト」を撮ったとき
出演していたモーガン・フリーマンに

“自分はこれからもっと
いい映画をつくりたい
どうしたらいいのか“

そう尋ねたら
一言こう言われたそうだ

“Listen”

よく“聴く”こと
この答えに紀里谷監督は
いい演技をするためにも
このことは大事なことなんだろうと
感じたという

全くもって同感なのだが
“Ben-Joe”の制作中
人の話をよく聴く人だと
感じた役者がいる

マイコ役を演じた大路絢果だ
彼女はまるで子どものように
人の話を素直に真剣に聴く人だ

想像力を働かせ
相手の立場に立って聴く
役者にとって非常に大切な力だと思う

彼女が演じたマイコという役は
リアリティを与えることが
とても難しい役であり
演じられる役者が
リハーサルギリギリまで見つからず
このまま見つからないのではないかという
焦りが正直あった

しかし彼女は現れた
9階のリハーサル室に
自転車を抱えて(※)

しかも私たち同様
ハングリーで意欲満々の
チャレンジャーであった

撮影現場でのムードメイカーとして
獅子見琵琶と双璧をなし
いつも現場を明るく盛り上げた

またそれまでの舞台の
大道具担当の経験を生かし
セット建設にも貢献
ここでも窮地は
チャンスに変わったのだった

監督 岩松あきら

※大路のメインの移動手段は自転車なのです。

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2017/09/15
6年越しのタッグ

出会いは
“幸福な結末”のオーディション
出演は実現しなかったが
それ以降も彼女は
日本舞踊・太鼓・アクション・長期合宿による演技レッスン…
次々と演技に関わる修行を
積み重ねていった
彼女は山本佳代子

そして“幸福な結末”から6年
“Ben-Joe”のオーディションに参加
私たちは彼女に大役を託すことになる

出演作「来つ寝世鏡奇譚」では
撮影中彼女は盲腸になったのだが
手術の翌週には
撮影に参加していた
そんな話を監督からも聞いていた

“Ben-Joe”の役作りのため
劇中に出てくる施設の参考になる
施設に出向き取材をするなど
意欲的に役に取り組んだ

夜のシーンの撮影では
あまりにリテイクを重ねたため
そのまま朝を迎え
撮影が翌日まで持ち越されることもあった

そんな時も持ち前の根性で乗り切り
撮影中体調が悪い時でも
それを口にすることはなく
黙々と演技を続けた
常に真摯な姿勢で役に向き合った

彼女は今秋から
活躍の場を海外に移すと聞いている

今後の彼女の活躍に大いに期待しつつ
私たちからも“Ben-Joe”の
いいニュースが海の向こうまで
届けられるようにがんばりたい

監督
岩松あきら

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2017/09/08
ほかの役者が演じるのは悔しい

“今日は琵琶ちゃんいないの?”

撮影現場に彼女がいないと
いつもヒロイン役の石川が
と淋しがっていたのを思い出す

Ben-Joeでは
嫌味な役なのに可愛らしい
そんな憎めないザ・おばさんを演じたのが
獅子見琵琶

学生時代から数十年
彼女の演技には歴史がある
百戦錬磨の経験が滲む演技で
役に血が通い肉がつき
生身の人間として立ち上がる

彼女は明るく元気な人柄で
彼女がいれば現場の
雰囲気が悪くなりようがない
最高のムードメイカーである

おおらかに見えて
実は細やかな気遣いのできる彼女は

どこかへ出かければ
いつもキャストやスタッフひとりひとりに
お土産を配り

三重県伊勢市の自宅から
往復約400キロの
津具(撮影現場)に自力で通ったりもした

撮影途中からは
全身の蕁麻疹に苦しみながら
撮影を断行

私は一度彼女に聞いたことがある
どうしてここまで苦労すると知りながら
出演を決めたのかと
その答えはシンプルであった

“この役をほかの役者が演じるのが悔しいから”

こんな思いをもつ役者との
共同作業は幸福以外の何ものでもない

彼女が演じた役“トモエ”も
このことを知ったら
きっと光栄に思うことだろう

監督
岩松あきら

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2017/09/01
“火田詮子”という唯一無二

“様々なプレッシャーが大波のごとく押し寄せ
60歳過ぎて立ちはだかる壁との闘いだった”

これは“Ben-Joe”で
ヒロインと渡り合う
先生役を演じた火田詮子の言葉だ

彼女は地元が誇る重鎮俳優
“Ben-Joe”の現場では
様々な苦労が彼女を襲った

膨大なセリフ・特殊メイク・体を張った演技・てっぺん(※)を超えても続く撮影の日々等

しかし現場ではそんな辛労辛苦など
微塵も感じさせず
早朝から元気に合宿所に現れ
現場の士気を上げ
撮影中はどんなに待ち時間が長くなろうが
どんなにリテイクが重なろうが
そして、どんなに撮影時間が遅くなろうが
一切不平のたぐいは口にせず
真摯に演技に打ち込む

それどころか
いつも共演者の人たちやスタッフに気を遣い
場を和やかな雰囲気にする
ベテランにもかかわらず
その謙虚な姿勢に感心することしきりだった

私が彼女を初めて目撃した
朗読会での語り
その気迫はそのまま
“Ben-Joe”へと注入された

すべての撮影を終え
彼女は撮影についてこう振り返った

“諦め感のない穏やかで熱い現場
遠いと感じていた津具の道のり(※)が
日に日に近くなっていった”と

彼女は本当に唯一無二
かけがえのない存在だと
今回の撮影を通して改めて感じさせられた

監督
岩松あきら

※てっぺん:深夜0時
※彼女は毎回約200キロを自家用車で早朝深夜を往復していた

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2017/08/25
映画「Ben-Joe」2部作となるか

「Ben-Joe」の仮編集も
ようやく終わりを迎えた

やたらと時間がかかってしまった原因は
撮影中からほぼほぼ分かっていた
単純に本編が長いのだ

実は前作の「幸福な結末」も
撮影素材を繋いだ段階で
3時間ほどあった

それを2時間には収めるために
1時間のカットとなると
カットごと細々短くするだけではなく
シーン丸ごと、シークエンス(※)丸ごと
カットしなければならない

そのため「幸福な結末」では
3人のキャラクターが
本編から姿を消すことになってしまった

今から思い返しても
そのことをその役者さんに伝えるときほど
辛いことはなかった…
本当に申し訳なかったと思う

今回の「Ben-Joe」の場合
現段階で撮影素材を繋ぐと3時間半
映画2本分の尺がある
脚本家にそのことを告げると
「…でしょうね」の一言

昔の上映ながらに
途中で休憩を挟むか
今流行りの前編・後編に分けて
2部作として上映するか
そんなことも一瞬思ったりもしたが
そういう訳にもいかず
断腸の思いで
2時間以内にカットしていくことになるだろう

この大幅カットの編集に立ち止まらず
次なる段階のアフレコへと
歩を進めていかなければならない

監督
岩松あきら

※シークエンス:
物語上繋がりのあるシーンによって構成される一連の流れ。シーンはシークエンスよりも小さな場面を指す

※写真は「幸福な結末」のアフレコ風景

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