「味大」の大将との再会

※写真の前列お二人が「味大」の大将夫妻

「Ben-Joe」の劇中には
ヒロインがバイト先の料亭で
宴会後の片付けをするシーンがある

しかしそうした宴会後の
状況をつくり出すには
とてつもない準備と費用がかかる

困っていたところ
知り合いに「味大」という
お店を紹介してもらった

「味大」の大将は
実際の宴会の後
宴会場をそのままにして
撮影をしても良いと言って下さった

有り難い言葉に感謝し
私たちは撮影を行った

撮影が終わった後
大将に挨拶に行くと
そこにはキャスト・スタッフ全員の
食事が用意されていた

さらにお酒まで出して頂き
あまりの温かい対応に心打たれ
それ以降も撮影をがんばろうという
思いをもつことができた

そして4年後
完成報告のため「味大」に伺うと
そこには大将夫妻の姿はなかった

お店は大将の息子さん夫婦が
切り盛りをされていた
息子さん夫婦に
事情をお話しすると
大将を電話で呼んで頂き
まもなく私は大将と
再会することができた

大将の口から
あの撮影後 半年もたたないうちに
奥様が体調を崩され
大将夫婦はお店をやめられ
奥様の治療のため
大阪に引っ越されていたことが語られた

そしてたまたま三河に
戻ってきている時
私がお店を訪ねたというのだ

映画の完成報告をすると
大将は映画を観に行くと言ってくださり
その数日後 奥様と大将は
大阪にあるウラカマ・シアターに来場された

観賞後
お二人は涙ぐんで「良かった」と言い
私に感じたことを一生懸命
伝えようとしてくださった
その実直な姿に胸を打たれた

お二人が帰られた後
私たちのもとに
食べ物や飲み物が運ばれてきた
(トライアル上映の会場は立ち飲みバーでもある)
お二人は帰り際に厨房へ行き
私たちにおいしいものを
食べさせて欲しいと
お金を置いていかれていたのだ

私は胸が熱くなった

1週間ほど前
東京で私は
「お金でしか人は動かない」
と若い映画監督に強く主張され
暗い気分になっていた

その監督が
このお二人の姿を見た時
同じ言葉が言えるだろうか…

監督 岩松あきら